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秋田県北秋田郡上小阿仁村 八木沢集落 (2019)
山見櫓/八木沢参道

 上小阿仁村の八木沢集落は周囲を山々に囲まれ、かつては集団で狩猟を行う「マタギ」の里として知られていた。狩猟を生業とする彼らにとって、山は多くの恩恵をもたらすと同時に、容易にマタギの命を奪い去る恐怖の対象でもあった。山には獣や植物を統べる存在である「ヤマノカミ」すなわち「山神」が住むと信じられ、深い畏敬の念をもってマタギたちによって祀られていた。八木沢集落最後のマタギが2009年に猟銃を手放したことで、八木沢と周囲の山々にマタギの姿は無くなった。マタギが消えたここ八木沢において、もはや山は信仰の対象とは言えない。かつては複数存在したという、山神を祀るための社も、現在では集落内の「山神神社」一つを残すのみである。しかし、人と山との関わり方が変化しても、山は依然として人間の力が遥かに及ばない存在として確かにそこにあり続けている。マタギを失った山々に今一度祈りを捧ぐための空間を、八木沢集落に制作した。

櫓 : 高さ3m ,参道:総延長50m 素材:杉

協賛:秋田プライウッド株式会社(材料提供)

制作協力:三上理沙、高橋琴美、松山さくら、森山之満

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